鳥取城
Tottori Castle
概要
城について
鳥取城は因幡国の中心部、千代川西岸の久松山(きゅうしょうざん・標高263メートル)に築かれた山城と、その山麓に設けられた二の丸・三の丸からなる複合城郭である。天文年間(1532〜1555年)頃に因幡山名氏が築いたとされ、戦国時代には武田高信、山名豊国らが城主を務めた。天正9年(1581年)、羽柴(豊臣)秀吉は鳥取城を兵糧攻めにより開城させた「鳥取の渇え殺し」を敢行し、城兵・領民が餓死するほどの凄惨な攻城戦を行ったことで知られる。この攻城戦は日本史上最も残酷な兵糧攻めの事例として歴史に刻まれた。
池田家と砂丘文化
関ヶ原後の慶長6年(1601年)以降、鳥取城には池田家が入封した。池田輝政・池田光政らによって城は整備・拡充され、因幡の藩政の中枢となった。特に池田光政は岡山藩(後に鳥取藩)の名君として名高く、学問・武芸の振興に努めた。鳥取砂丘は鳥取城から近い日本海沿岸に広がる日本最大の砂丘であり、因幡国独特の自然環境を象徴するとともに、砂丘の砂を用いた砥石(因州砥)の産地としても知られる。因州砥(いんしゅうと)は刀の仕上げに欠かせない天然砥石の産地として全国の刀工に珍重された。
羽柴秀吉の兵糧攻め
天正9年の鳥取城攻めは、秀吉の中国攻めの中でも特に有名な作戦である。秀吉は事前に鳥取周辺の米を高値で買い占め、城方の兵糧が尽きるよう周到に準備した。開城した時には城内の餓死者が数千人に上り、城主・吉川経家(きっかわつねいえ)は城兵の助命を条件に自刃した。この戦いは「智謀による勝利」と「凄惨な結果」の両面を持ち、秀吉の冷徹な軍略と人道的問題の間の緊張を示す歴史的事件として語り継がれている。
刀剣の砥石産地
因幡・伯耆両国(現在の鳥取県)は古来より刀剣の研磨に欠かせない砥石の産地として知られており、「伯州砥(はくしゅうと)」「因州砥(いんしゅうと)」はいずれも全国の刀工に高く評価された。砥石は刀鍛冶にとって刃物の仕上げを左右する最重要の道具であり、良質の砥石が産出される地域は自然と刀剣文化の重要な拠点となった。江戸時代の池田藩はこれらの砥石産業を藩の重要な経済資源として管理・振興した。
因幡の刀工と伯耆安綱
鳥取城のある因幡国の隣、伯耆国(現在の鳥取県西部)は日本刀の聖地のひとつである。伯耆安綱(ほうきやすつな)は平安時代中後期(9〜10世紀)の伝説的刀工で、「天下五剣」のひとつとされる「童子切安綱(どうじぎりやすつな)」を鍛えたとされる。童子切安綱は源頼光が大江山の鬼・酒呑童子を斬ったという伝説の名刀で、現在は東京国立博物館が所蔵する国宝である。鳥取・伯耆地方は日本刀の黎明期から最高水準の刀鍛冶を生んだ地として、日本刀史において独特の位置を占めている。
刀剣との関わり
鳥取城が位置する因幡国と隣接する伯耆国(現在の鳥取県)は、日本刀の歴史において最も重要な地域のひとつである。伯耆国で活躍した伝説的刀工・伯耆安綱は平安時代中後期に活躍したとされ、その作とされる「童子切安綱」は「天下五剣」(童子切安綱・三日月宗近・大典太光世・数珠丸恒次・鬼丸国綱)のひとつとして日本刀史の頂点に位置づけられる名刀である。童子切安綱は源頼光が酒呑童子を退治した際に用いたという伝説を持ち、太刀の中でも最高水準の古刀として珍重されてきた。現在は東京国立博物館所蔵の国宝で、日本最古の名刀として世界的にも知られている。鳥取・因幡地方の砥石産業もまた日本刀文化に欠かせない貢献をしている。「因州砥」「伯州砥」として知られる鳥取産の天然砥石は、刀の研磨仕上げに最適の硬度と粒度を持ち、全国の刀工・研師から珍重された。砥石の品質は刀の最終的な仕上がり——刃文の明るさ、地鉄の沸えの美しさ、鏡面の清澄さ——を大きく左右するため、良質の砥石産地は刀剣文化の隠れた功労者と言える。池田家が藩政を担った江戸時代には、池田光政が岡山・鳥取両藩で名君として武芸・学問を奨励した。池田家は秀吉・家康両者から信任を受けた大名家で、豊臣・徳川両家の名刀コレクションとの接点を持っていた可能性がある。鳥取城の博物館(仁風閣および鳥取県立博物館)では池田家関連の刀剣・甲冑・刀装具を展示しており、伯耆安綱以来の因幡・伯耆の刀剣文化の厚みを体感できる。
見どころ
- 久松山山頂の山城跡 — 標高263mの頂上から鳥取平野と日本海を一望。登山道あり
- 仁風閣 — 明治時代の洋館。旧池田侯爵家の迎賓館。国の重要文化財
- 鳥取砂丘 — 日本最大の砂丘。城から車で約15分。日本の不思議な自然景観
- 鳥取県立博物館 — 池田家ゆかりの刀剣・甲冑をはじめ鳥取の歴史資料を展示
- 鳥取城大手登城路石垣群(仁和寺門跡・中仕切) — 近世城郭の多様な石垣工法を間近に見られる
※開館時間・入場料は変更される場合があります。訪問前に公式サイトをご確認ください。
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