福岡城(舞鶴城)
Fukuoka Castle (Maizuru Castle)
概要
城について
福岡城は慶長6年(1601年)、関ヶ原の戦いで東軍に従い筑前国52万石を与えられた黒田長政によって築かれた九州最大級の城郭である。那珂川と博多湾に挟まれた台地の上に構え、本丸・二の丸・三の丸の三重構造を持ち、最盛期には47棟の櫓を誇る巨大な城であった。父・黒田官兵衛(如水)の軍略を受け継いだ長政は、城を実用的な軍事拠点として設計しながら、博多の商業都市としての繁栄を支える行政拠点としても機能させた。
黒田家の来歴
黒田家の来歴は播磨国から始まる。黒田官兵衛孝高は豊臣秀吉の軍師として中国攻め・九州平定に辣腕を振るい、秀吉が「もし天下を奪う者がいるとすれば官兵衛しかいない」と恐れたほどの稀代の策士であった。官兵衛は備中高松城水攻めの立案など数々の奇策を案出し、秀吉天下取りの最大の功臣のひとりとなった。子の長政は関ヶ原において東軍諸将の内応工作を進め、徳川家康に深く信任された。福岡城はこうした黒田家の武勲と才知の象徴として筑前の地に屹立した。
名刀へし切長谷部の伝説
黒田家が所蔵した名刀の中でも「へし切長谷部」は日本刀史上最も劇的な逸話を持つ刀のひとつである。この刀はもと織田信長の所持品であり、信長が逆らった茶坊主を棚の下に逃げ込んだところを棚ごと押し切ったとの伝説から「へし切」の号を得た。長谷部国重の作で、南北朝時代の豪壮な姿と覇気に満ちた刃文は、信長の暴力的なまでの力の象徴として受け取られた。後に信長から黒田官兵衛に下賜されたこの刀は、現在も黒田家の家宝として福岡市博物館に所蔵され、日本刀の中でも最高の知名度を誇る名品のひとつとなっている。
博多と刀剣文化
博多は古代から大陸との交流拠点であり、刀剣に使われる金属・砥石・漆などの材料の流通拠点でもあった。筑前国には筑前左文字(左)という日本刀史上に輝く名工の系譜が存在し、左文字の刀は南北朝時代の力強い姿と独特の刃文で後世の刀工に多大な影響を与えた。秀吉の「九州征伐」以後、博多は商工業の中心として急速に復興し、黒田家の庇護のもとで職人・商人が集住した。
舞鶴公園と現代
現在の福岡城跡は舞鶴公園として整備されており、桜の名所として春には多くの市民が訪れる。多聞櫓・潮見櫓・祈念櫓など一部の建造物が現存し、国の重要文化財に指定されている。福岡市博物館にはへし切長谷部をはじめとする黒田家ゆかりの刀剣・甲冑・資料が所蔵されており、九州の刀剣文化を理解する上で欠かすことのできない施設である。福岡は現代においても九州の経済・文化の中心として発展を続け、大宰府・太宰府天満宮など古代・中世の遺産とともに深い歴史層を持つ都市である。
刀剣との関わり
福岡城と黒田家の刀剣史における最大の宝は、疑いなく「へし切長谷部」である。作者の長谷部国重は南北朝時代の山城国(京都)の刀工で、豪壮な体配と沸えの強い刃文が特徴の大太刀を多く残した。この刀がいかにして織田信長の手に渡ったかは明確でないが、信長が京都の武器商人あるいは献上品として入手したと考えられている。信長はこの刀を愛用し、天正5年(1577年)頃、九州情勢を安定させる功績を認めて黒田官兵衛に下賜した。官兵衛から子の長政、そして黒田家代々に受け継がれたこの刀は、明治維新後も黒田家の旧蔵品として厳重に保管され、昭和の時代に福岡市に寄贈された。現在は福岡市博物館の常設展示として公開されており、国宝に指定されている。刃長74.9センチ、反りが浅く豪快な体配を持つへし切長谷部は、南北朝時代の山城刀の特徴を典型的に示す名作である。刃文は沸えが強い湾れを主体とし、帽子は焼き詰めに近い大丸となっている。黒田家が播磨・備前と縁の深い出身であったこともあり、備前伝の刀も家宝に含まれていた。また、黒田家の家臣団には刀の鑑定眼を持つ者が多く、藩主の命で名刀の保存・管理に携わった。筑前国の刀工としては、南北朝時代に活躍した筑前左文字派の始祖・左文字(安吉)が特に著名で、その作風は後の相州伝・備前伝の両方に通じる独自の美を持つ。左文字の刀は豊臣秀吉が天下に広め、多くの大名がその作品を求めた。福岡市博物館に収蔵されたへし切長谷部は、九州最大の刀剣の聖地として全国の刀剣ファンが訪れる必見の名品である。
見どころ
- へし切長谷部(福岡市博物館) — 信長から官兵衛に下賜された国宝の名刀。九州最大の刀剣の見どころ
- 多聞櫓・潮見櫓 — 現存する江戸時代の城郭建造物。重要文化財
- 舞鶴公園の桜 — 天守台からの福岡市街の眺望と約1300本の桜が春を彩る
- 鴻臚館跡展示館 — 奈良・平安時代の外交施設の遺構。城址の歴史層を体感できる
- 大宰府天満宮 — 学問の神・菅原道真を祀る古社。城から電車で約30分
※開館時間・入場料は変更される場合があります。訪問前に公式サイトをご確認ください。
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